
ようやく名古屋の暑い夏も終わろうとしております。
さて、6月に組込みマルチコアサミット(EMS2025)を成功裏に開催できました。今回はTOPPERSカンファレンスと同時に、大田区産業プラザPiOとオンラインによるハイブリッドにて開催しました。前年とほぼ同じ74名の参加(EMS分のみ)がありました。ご参加いただいた方には御礼申し上げます。
さて、EMSでは毎回マルチコア利用に関するアンケート調査を実施しておりますが、今回は開催方式変更の影響で十分な数の回答を得られなかったため、設立10年間(2014年~2023年)のデータをまとめました。資料全体はこちらにあります。車載関連のソフトウェア製品開発や研究開発の来場者が多いこと、性能や省電力、システム統合への期待が多いこと、コロナ禍の影響はあったがこの10年で導入が進み、SMP型が増加傾向でOSのスレッドライブラリの利用が多いこと、開発環境に課題を感じておられる方が多いこと、将来のコア数は徐々に増えると感じているなどの傾向が見て取れます。ここではその中から2件紹介させていただきます。
マルチコアへの期待
まず、マルチコアに期待する点です。下の円グラフは10年間の総計であり、多い方から性能への期待が41%、省電力への期待が16%です。またシステム統合(チップ数削減)への期待も11%程度あります。

以下の棒グラフは毎回の結果ですが、傾向は10年間であまり変わっていません。EMSは車載関連からの参加が多いですが、システム統合に関しては、車載関連では単なるECU統合からSDVアーキテクチャ論になってきており、徐々に期待が増えてきているようにも見えます。

マルチコア導入予定
マルチコア導入予定については各回のグラフのみを示します。組込みマルチコアコンソーシアムメンバーが元々所属していたJEITAマイクロプロセッサ専門委員会においても同様のアンケート調査を実施しており、2011年からの経年変化を示しています。当初は未定や検討中も多くありましたが、徐々に未定が減り、予定や検討中が導入済みに変わってきている様子がわかります。

組込みマルチコアコンソーシアム(EMC)では、協調的な垂直連携を容易にし、エコシステムを構築することを目指しています。そのために、マルチコアに慣れておられない方に向けた技術情報のブログや、マルチコアを理解していただくための動画や資料作成、マルチコア向け設計ガイドの作成などを行っています。また、システム・ソフトウェアから利用可能なハードウェア抽象化記述SHIM (IEEE2804)のような国際標準化活動も実施しています。
これからもEMCをご支援いただきますようお願い申し上げます。
組込みマルチコアコンソーシアム会長
枝廣 正人(名古屋大学大学院情報学研究科)
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